2D3D変換セミナー/情報交換会

キュー・テック様のご協力により、2D3D変換セミナー/情報交換会を下記の通り実施いたしました。


1.日時 2012年10月12日(金)15:30〜18:00
2.場所 株式会社キュー・テック赤坂本社 試写室
3.出席者(順不同、敬称略)
  NHKメディアテクノロジー、キュー・テック、キラ図研究所、ジュピターテレコム、ソニー、
  ソニーPCL、TBSテレビ、テレビ朝日、パナソニック、パナソニック映像 計10社14名
  他、事務局

4.議題
  1)2D-3D変換について
   @ 3D機材についての紹介
   A 2D-3D変換について
   B 3D編集について
   C 2D-3D変換 コスト・スケジュール感等
  2)情報交換会

5.内容
1)-@3D機材についての紹介  
同社の3D機材についてキュー・テック桜井氏よりご説明いただきました。

1)-A2D-3D変換について  
下記項目について、キュー・テック三田氏よりご紹介・ご説明いただきました。

・2D-3D変換を使った作品
・2011 トランスフォーマー、パイレーツオブカリビアン、キャプテンアメリカ
・2012 スパイダーマン、ジョンカーター、メンインブラック、アベンジャーズ
・2D-3D変換のメリット
・3D撮影不可能なものも3D化が可能
・映像の修正が容易
・撮影工程がシンプルになる
・撮影による左右の色差が出ない
・立体感が自由に調整できる(演出的な部分ではここが一番大きい)
・2D-3D変換の種類
・VFX/CG技術を用いた2D-3D変換(キューテックもこちらに入る)
・機械による自動変換(VICTORの開発した機器や3DTVに組み込まれている機器など)
・2D-3D変換の工程
・カットの設計(演出的設計)
・立体感・空間感の演出(構図・レンズ・演出意図・作品からリアリティーとデフォルメのバランスを考え演出する)
・カットの深度(各カットの近景・遠景の視差)
・手前奥のバランス(スクリーンjを基準に手前・奥の割合)
・カットの設計(技術的設計)
・一枚の絵を3D用の素材としてどう切り分けてゆくか
・素材のどこを活かして、どこを作り直すか
・上記が決まることによって、必要な工程、作業量、優先順位が決まる
・素材の制作
・ロトスコープ
・カットの設計に基づき距離感が必要な部分は切り分けレイヤー化する
・一番手間のかかる作業だが最終クオリティーに影響する重要な工程
・デプスマップにも活かされる
・デプスマップ
・立体感を決めるための重要な素材
・ロトスコープのマスクから作成するデプスとCGソフトからレンダリングよるデプスがある
・クリーンプレート
・手前の要素が消された背景のみの素材
・2D合成によるクリーンプレートと3Dトラッキングによるクリーンプレートがある
・2D合成によるクリーンプレートではコーナーピン、回転、色調整、マスクワークなどを駆使して切り貼りする
・3Dトラッキングによるクリーンプレートでは、パースの変化がある、広角レンズを使っているなど2Dでの切り貼りでは対処できない場合
・コンポジット(統合)
・左右の視差を持ったコンポジット(設計に基づいて視差を作りながらコンポジットする)
・コンポジット(立体感と距離感)
・ものの立体感
・デプスマップ+ディスプレイスメントマップによる視差
・ディスプレイスメントマップとはデプスマップ等のグレースケールの明度を参照し、明度に応じてその部分のピクセルを移動させる。
・ジオメトリ+カメラマップ+ステレオレンダリングによる視差
・もの同士の距離感
・HIT(Holozontal Image Translation)
・ディスプレイスメントマップのみでは距離感を出すとゆがみが出るが、レイヤー分割+ディスプレイスメントマップであればゆがみもなくしっかりした距離感が出せる。
・自然な立体感とは
・2D-3D変換は良くも悪くも自由であり、ありえない立体感も作れてしまう。
・少なくとも画面を構成しているものが正しい順序で配置され個々に立体感がある状態で、自然な立体感を目指す。
・自然な立体感≠正しい立体感
・望遠レンズ、広角レンズの撮影は不自然な立体感を作り出してしまう
・2D-3D変換には自然に見える「演出」が必要
・自然「らしさ」とは、記憶にある見なれた立体感・距離感
・「変換技術」と「観察力」によって3Dを「再構築」することが2D-3D変換である。

1)-B3D編集について 
同社の3D編集について、キュー・テック木原氏よりご紹介いただきました。

1)-C2D-3D変換 コスト・スケジュール感等
2D−3D変換にかかるコストやスケジュールについて、キュー・テック藤浪氏より
ご説明いただきました。

・海猿の際はクライアント側にハリウッドのコスト感(2〜3百万/分)を
 把握していただいていたが、現在は自動変換技術などもあるため、
 低くなってきている。
・このままコストに合った作品を作っていると、3D離れが進んでしまう。
・海外では旧作の立体化などが進んでいる。
・日本の中だけで勝負しようとすると映画の3D化は進まない。


2)情報交換会
○自社の取組状況
・2年前にVODで配信をしたときには非常に反応が良かったが、最近は全然盛り上がらない。
・部署名から3Dが外れ、4Kも含めて対応するようになった。
・過去に3D変換の実績があり、続けていくことが大事だと思う。こうした場を通じて盛り上げてゆきたい。
・昨年は3D一色であったが、今年は月に1本程度と非常に減ってしまった。
・3.11以降イベントが減り、3Dも減った。ただし中国では非常に盛り上がっている。
・BSで週1本3D放送している。それ以外では博展映像で3Dを利用している。
・プロレス中継で3D映像を撮影して、映画館での上映やブルーレイディスクでの販売などを行っている。
 収支は2Dとあわせてトントンというところ。

○今後の取組み等
・自主制作能力がないため、いただいたものを放送するだけ。放送できるコンテンツに関しては届けたい。
・3Dが放送されていた時間の番組は、通常の2Dより低いという結果が出ている。
・日本は盛り上がってないが、ヨーロッパや中国ではまだまだ盛り上がっている。3D映像がネットワーク
経由サービスがあるが、海外と比べても視聴の回数は多い。決して日本人が3Dに興味がないわけではない。
・元々3Dに取組んだ時点から、1-2年ではなく5-10年のスパンで判断すると考えていた。オリンピック映像
は海外では二百時間以上放送されている。3D対応のテレビがここ数年で20%を超えるので、それに向けて
取り組んでゆきたい。2D3D変換に関して、ローコストが必ずしも良いことではないと思うが、コンテンツ
を届けるためには必要な技術。コンテンツがきちんと届くようになれば、ビジネスが回るようになるのでは。
・3Dがはやらない原因は、やはりコンテンツがあまりにも足りていないからではないか。デプスマップの話があったが、
上手くデプスマップ込みで映像を作ればモニターのサイズに係らず映像を利用できるようになるのでは。
自動変換でやればよいという問題ではなく、見やすい映像であることが絶対条件。そうしたことを続けてコンテンツの
蓄積が必要なのではないか。
・新しい出口を模索している段階。タブレットに向けた取り組みなどを行っている。
・映画で明らかに2Dと3Dでは違うと実感している。視差は抑えた作品が多いが3Dの方がやはりリアル。
3D映画を経験することによって、視差によるリアルな体験をすると、もっと見たくなるのでは。
撮影に関しては技術的にはほぼ解決されているので、継続することが重要なのではないか。
・エンターテインメントだけでなく、博物館での展示や医療など、テレビや映画に限らない分野で成功すればよいのではないか。
・3D映像を博展映像のように希少価値がなくなっている。次の準備はできるかもしれないが、何かを作り続けながら
待っているのであれば、4KやHTML5などのような新しい技術の方が注力されている。
・今あるコンテンツ展開の継続、スポーツ中継の3D対応、スマートフォンへの展開などの企画は上がるが、
収支が見合わない部分が多くなかなか実施にいたらない。
・3Dに関しては4年ほど前から始めた。元々は4人くらいで始めた。モノを作り続けないと維持もできない。
制作機会が国内では厳しい中、どうハリウッドに喰い込むかを考えている。3Dは構えて見るものだと思う。
3Dはメガネの関係もあって、あえて見ようと思わない限り見ない。「海猿」の際に役者がリアルに見えると
いうことを体験した。観客がそういう体験を何度もしてもらわないといけないのではないか。
・特撮のミニチュアが非常にミニチュアに見えた。3D化によって当時のリアリティが再現できるのでは。
昔の記録映像を3D化するということもあるかもしれない。
・ゴルフのグリーンの芝目がリアルに分かるということが、今までの3Dブームとは違うのかもしれない。
・必ずしもアクション映画ではない。映像のきれいなものの方が立体感を感じられるのではないか。
・メガネなしのインテグラルTVが実用化しても、それで作品を見るということは考えにくい。
・手術映像が、内臓の色は同系色の色が多いため非常に効果があった。色の差分情報が少ない方が、
3D効果があるのかもしれない。しっとりした風景の3Dを見てもらう機会を増やすことを今後の展開で考えたい。
・プロデューサーを呼んでチェックをする際に起こる問題点として、立体の見え方が人によって
違うということがある。SHIP2000では立体感を数値化しているが、質感のリアリティについてはさらに難しい。
そう感じてくれない方には伝えることが難しい。
・映画やドラマも良い3D作品が出来上がっている。残念ながら出口が少ない。放送でコンテンツが
届かないとお金が回らないのがジレンマ。放送の突破口が他の国でも出てくれば状況は変わるかもしれない。


                                                                      以上