『パナソニック  ロンドンオリンピックでの3D放送の取り組みについて』/情報交換会


パナソニック様のご協力により、下記の通り、セミナー/情報交換会を実施いたしました。

1.日時  11月22日(木)  15:00〜17:00
2.場所  パナソニック デジタルソフトラボ
3.出席者(順不同、敬称略)
  NHKエンタープライズ、NHKメディアテクノロジー、キュー・テック、キラ図研究所、JVCケンウッド、
  スカパーJSAT、ソニー、ソニーPCL、パナソニック 計9社 14名
  他、事務局

4.講演項目
 (1)ロンドンオリンピックでの3D放送の取り組みについて
  講師:パナソニック株式会社AVCネットワークス社 和田学明氏
  ・3D制作の概要
  ・AG-3DP1カメラの導入
  ・各競技の3D中継
  ・まとめ
  ・映像デモ
  ・質疑応答
 (2)情報交換会

5.内容
(1)ロンドン五輪での3D放送の取り組みについて
 ○3D制作の体制
 ・IOCの下にOBSがあり、そこからRHBs(放送権を保有している放送局)に映像が供給されている。
 ・OBSの3D制作では、3台の中継車を利用して生放送を行っている。それ以外に各競技場に6チームのENGクルーが散らばっている。
 ・IBC(国際放送センター)では、集まった映像を集約して送信したり、メディアに記録したりしている。
 ・IBC内のシアターでは、関係者向けに3Dの映像とスーパーハイビジョンの映像の上映が行われていた。

 (2)3D制作の概要
 ・生中継は中継社で行い、ダイジェスト映像はENGのチームが行った。
 ・また日々のサマリー番組(1時間)も作成した。
 ・そのようにしてOBSは230時間以上の3D映像を世界に配信した。
 ・中継社で利用されたカメラは、AG-3DP1が45%、リグ式のカメラが45%、その他カメラが10%であった。ENGで利用されたカメラは
  AG-3DP1が100%であった。

 (3)AG-3DP1の導入
 ・AG-3DP1では、従来のAG-3DA1と比較して、広角で17倍ズームが使えるようになった。
 ・また3Dアシスト機能で奥行きや飛び出しの視差についてもアラートを出すことができる。0BSの3D制作では、奥行きが2%、
  飛び出しが1%というガイドラインで制作が行われた。
 ・実際の運用では、中継車の撮影ではこの機能は利用されていなかった。一方でENGの撮影ではこの機能は利用されていた。
 ・AG-3DP1では、縦ズレ補正キャリブレーション機能や、リモコンによるコンバージェンス遠隔操作機能を持っている。
 ・AG-3DP1の導入にあたって、事前のテストとして、ホスト局による事前テストや、リグ式3Dカメラとの比較テストや国際大会での
  運用テストなどを行っている。
 ・AG-3DP1は両眼間隔が58mmで固定のため、できるだけ近い位置から撮影できるような場所で利用されている。
 ・AG-3DP1のうち2台についてはRF運用を行った。開会式の会場内の撮影などに利用している。

 (4)中継システム
 ・陸上競技のスタジアムの観客席に配置されたカメラサイドバイサイドのリグ式のカメラで、カメラ間隔は1mなどのように離してある。
 ・カヌー競技は上からポールがつるされているため奥行き間が良くわかり、3D映像の評判が良かった。
 ・コンバージェンスオペレーターーはカメラ1台につき1人で、それとは別にステレオグラファーが視差をチェックしていた。
 ・器械体操では選手に近い場所でAG-3DP1を利用していた。
 ・器械体操は安定した3D映像が撮影できた。バスケットボールだと移動する方向がわからないが、器械体操であれば競技の方向性の
  パターンが決まっていたためである。
 ・競泳では、選手入場の撮影に肩載せのRF無線伝送運用を行った。
 ・競泳では、水中撮影用のカメラもあったが、水面と水中を同時に撮影するような特殊な映像については2Dの映像を3D変換して
  利用することも行った。

 (5)ENG運用
 ・ENGクルーに関してはトレーニングが必要であった。
 ・ENGクルーの方は、経験豊富な方からそうでない方までばらつきがあった。

 (6)世界各地での3D放送
 ・米国では242時間の中継がされたが生中継は無しで24時間後に録画が放送された。
 ・英国では、BBCの3D中継は開閉会式と100m決勝だけであった。
 ・中国では3D専門チャンネルで300時間の生放送がされていた。
 ・日本では9月にBSのハイライト番組としてBS民放5局で放送を行った。
 ・パナソニックセンターでもオリンピック3D映像を定時上映していた。
 ・東京と大阪の合計で約16万人が視聴した。
 ・英国では、BskyBでは毎日8時間のライブ映像と4時間のハイライト映像で計100時間を放送をした。
 ・BBCの3D視聴率は0.5%。ウィンブルドンの視聴率が0.18%であったためそれよりは向上した。
 ・パナソニックではオリンピックパーク内のパビリオンでも3D映像を上映し、39740名の方が来場した。

 (7)その他
 ・オリンピック史上初めての3D中継に挑戦したが、OBSとしても成功したという声を聞いている。
 ・奥行き感、臨場感のある映像としてカヌーやバスケットボール、ビーチバレーボールなどがある。
 ・カヌーはポールの前後関係が良くわかり、水流も臨場感があった。
 ・バスケットボールやビーチバレーボールは、プレイヤーの前後関係が良くわかった。
 ・安心して見られる3D映像として、器械体操や陸上競技などパターンの決まった映像がある。
 ・要注意な3D映像として、RF運用時につい選手に近づきすぎてしまうケースが発生していた。

 (8)Q&A
 Q:カヌーの映像は見られるのか。
 A:使用権の問題で今は見せられない。

 Q:2D→3D変換はどういったところで利用されているのか。
 A:水中の映像などや陸上で同時に走る映像は2D→3D変換。

 Q:RF運用について教えてもらいたい
 A:周波数帯まではわからない。左右同時に送っている。RF運用の場合はコンバージェンスの
   オペレーションもRF運用で行えるようにしている。

 Q:スクリーンサイズの想定は何インチと考えていたのか。
 A:OBSと相談したが明確な返答は得られなかった。基本は65インチを想定しているということであったが、
  200〜300インチでも対応できたのではないかと思う。

 Q:国内の視聴率は
 A:把握していない

 Q:映像のフォーマットは
 A:1080の50iのサイドバイサイド

 Q:今もパナソニックセンターで3D映像を見ることができるのか。
 A:今は上映していない。

 Q:どういったスポーツが人気があったのか。
 A:統計立てた調査は行っていない。

 Q:放送以外に配信したケースはあるのか。
 A:そこまでは把握していないが、権利の問題もあり簡単にはできないのではないかと思う。

 Q:中国の反響はあったか
 A:国の施策として長時間の放送があったと思うが、反応については聞いていない。

5.情報交換会
○3Dの放送を見たことがあるか。どう思ったか。
 ・パナソニックセンターで見たときと比較して、家で見るときは競技によって良いものと悪いものがあるのではないかと感じた。

○今日の映像を見てどう思ったか。
 ・開会式のシーンはすごく3D向きだと思う。それを3Dの普及につなげられなかったことはもったいなく思う。
 ・3D効果が抑えられているのではないか。3Dとしての面白さや楽しさがあまりアピールできていないのではないか。
 ・テレビ向けに3D映像を作成するなら、65インチではなく40インチ向けとしないと、日本人はともかく他の国の方は
  満足いただけないのではないか。
 ・もう少し3DのPRにつなげられれば良かったのではないか。
 ・ライブでやる難しさが映像に出ている。例えば少し小人現象的な部分やコンバージェンスが上手くいっていない部分も
  あったと思う。これをそのままパッケージにするのは難しいのではないか。個人的にはまだライブ映像をそのまま
  見るのならともかくそれをソフトウェアにするは難しいのではないかと思っている。
 ・立体感以上に色の鮮やかさや艶やかさを感じる。色の多いシーンのほうが思い出に残る。映像についてはおとなしめだ
  という気はする。
 ・なんとなくワンパターンなのではないかと感じる。カメラが固定されていて動きがほとんど無いからではないか。
 ・3Dの場合、顔のアップの表現が難しいのではないかと思う。
 ・デモ映像として撮影するものとライブ中継では全く違う。デモ映像を撮影するのであればそれように撮影しないといけない。
  また2Dと同じように撮影するのであれば、2Dで撮影すればよいので、3Dならではの絵作りを考える必要がある。放送が
  あったらそれを劇場で見られるようにするということも考えないと広がりがない。
 ・開会式に関しては、特に大画面で見た際には、超高精細でも、3D映像でも臨場感があったと思う。引きの映像のスポーツ
  であれば、3Dよりも超高精細の方が向いているのではないか。一方で、躍動感のある映像については3Dのほうが良いの
  ではないかと思う。特に女子の体操の平均台は、3Dで見ると非常に臨場感を感じる。どういうスポーツと相性が良いのかは
  ディスカッションできればと思う。
 ・今回の映像を見て一体型のカメラの威力はすごいと思った。顔の表情のアップを撮ろうとしたら一体型のハーフミラーリグの
  必要があるのではないかと思った。
 ・家で見ている場合は、ながら見が多いのでずっと3Dを見ているのはつらいのではないかと思った。本当に見たい3Dが何かを
  知ることがこれからの課題なのではないか。

○皆さんの感想を聞いてどのように思ったか。
 ・競技によって、3D撮影が良いものとそうでないものがあった。また競技によっては、両眼間隔を可変にしないと難しいのでは
  ないかというものもあった。
 ・個人的にはメインスタジアムの絵は難しいと思った。個の選手に注目するのであれば良いが、俯瞰してみる映像では
  あまり3Dの効果がなかった。
 ・広い会場の場合3Dの効果を出すことは難しい。東京競馬場で撮影した際は、最後の直線の起伏では3Dの効果があったが、
  それ以外の部分はあまり効果が無かった。

○めがねをかけているわずらわしさがあるのでは?
 ・めがねをかけているわずらわしさより、映像が魅力的であればそれが勝つのではないかという意見もある。

○スカパーで2Dで見たい人は2Dで見ればよいという考え方は非常にヒントがある。

○3Dだから表現できる魅力を見せてそれを感じてもらえればリピーターになってもらえるのではないか。

○2Dと3Dで撮影する場合は、初期は2Dが優先されたということがあった。今回はそういったことはあったか。
 ・今回の撮影ではOBSの指示で撮影したため、そういったことはなかった。


パナソニック株式会社
AVCネットワークス社 
和田学明氏




                                                                      
参考資料:世界のロンドン五輪放送状況(会員へのリンク専用)
                                                                      以上